更紗模様


きものや帯の模様としてよく使われる更紗模様

世界を巡る更紗のヘンテコな植物と動物
更紗ってご存知ですか?インド起源の模様でアジアに広まり、その後ヨーロッパなどで製作された柄で着物にも多く採用されており、日本の伝統文様とはまた違った雰囲気の独特のエキゾチックな感じでファンの多い意匠です。更紗という語源には諸説ありまして、wikipediaによりますとインド北西部の港のスラト(Surat)が語源という説が昔から優勢であったけれど現在ではあまり支持されておらず、16世紀末のオランダ人、リンス・ホーテンの『東方案内記』に綿布の名としてsarasoあるいはsarassesという名称があり、これが語源という説もある。
とのことで実際のところその語源はよくわかりません。
さて、この更紗ですが人気の要因の一つとして「描いているのがなんの花かわからない」というものがあります。私自身はあまり好きではない考え方なのですが、写実的に花が描かれているとその季節にしか着ることができないと考える方も一定数おられるので、そういう方にとってはなんの花かわからない=いつ着ても大丈夫、ということで安心して着られるのでしょう。
確かに更紗模様はよくわからない植物や動物が描かれていてそれが逆にエキゾチックな雰囲気を醸し出しているのですが、なぜこんなワケノワカラン柄になったのでしょうか。実はこれには深い歴史があります。これはあくまでも推測ですがもともとインドで作られていた更紗模様は生活に密着していた草花や動物を写実的に描いていたと考えるのが自然でしょう。あえてワケノワカランなんの花かわからないものを描く必然性がないと思いますので。
その後更紗文様は長い時間をかけてシルクロードを伝って中国に入ってきました。当然中国人も今まであった柄とは全く違う柄が中国に入ってきたため、当時の権力者に珍重され次第に中国全体に広がっていきました。そして時は流れ中世の大航海時代を迎え世界中で人間が行き来するようになり、当然のことながら、欧米人はそれまでヨーロッパにあったものとは全く趣の違う柄や形のものに出会うことになり、貿易が盛んに行われることになりました。
ヨーロッパ人からすると東の果ての国から全く見たことのないものがやってくるんですから、それは新し物好きの方にはたまらないものだったでしょう。大金持ちの商人が船乗りを雇って雨や風、嵐に負けずに命の危険を冒して中国やインドまで買い付けにいかせたことと想像します。ヨーロッパでは見たことのないようなものが手に入るし、それをヨーロッパに持って帰れば高値で飛ぶように売れるんですから莫大な費用をかけても、命の危険を冒しても航海に出かける人は後を絶ちません。現代で言えば、遠く離れた星に文明があり、今までの地球人が持っていたものとは全く違うものが地球にもたらされるようになり、そうすると民間のロケットを作る業者が出てきて多少の命の危険を冒してでも他の星に行って貿易しようと考えたようなものでしょうか。おそらく当時はそのぐらいの命の危険と莫大な費用がかかったことと容易に想像できます。
ところが時代が流れると、欧米人は「いちいち買いに行かなくてもこっちで作れるんじゃね?」と思い次第にインドや中国様式のものを真似し始めます。これが一般的に言われる「シノワズリ様式」と言われるもので建物や陶磁器などに中国様式を取り入れて流行しました。そしてもちろん更紗模様なども取り入れられ広まるようになります。
しかしながら、当時はまだヨーロッパと中国、インドの文化交流のパイプは細かった時代ですから一般の人は「China」「India」なる国がどこにあるかもわかりませんし、植物や動物もその地域独特のものが数多くあり、そのほとんどはヨーロッパ人にとっては見たことのないものでした(だからこそ珍重されたのですが)。
一応表面上は真似をしようとしますが、なにせ全く見たことのない草花や動物の柄ですから何がなんやらわかりません。「こんな動物、本当にいるのかなあ」なんて思いながら一所懸命真似て柄付けしたことでしょう。たまにいい加減な職人がいてクチバシを伸ばしたり、手を抜いて花びらを少なく描いたりというようなこともしたかもしれません。
作る方は柄の元になった動植物がわからないし、買う方もわからないし、かくしてヨーロッパ人のテイストが多少入ったヘンテコな動物や草花の柄が出来上がったの
ご自身がわからないから、どうしても間違いが多くなり、またその間違いに気付くこともできなかったのです。おそらく当時のヨーロッパ人も同じような感じだったと推測します。
また、浴衣の季節になります。中国製のものが多々販売されておりますが中国製ってなんとなくすぐにわかるんですよね。柄はおそらく日本で考えられていると思うのですが、中国の職人さんが作っているのか色が全体的にキツく見えてしまいます。やはりいくら色を指定してその通りに作ってもらおうとしても、どうしても中国人が生まれた時から親しんできた色彩感覚に似てくるようで全体的に中国っぽい色合いになってしまいます。
それと同じでヨーロッパ人が作ったものはいくら中国のものを真似てもどうしてもヨーロッパテイストが醸し出されるため、またそれを面白がって中国人が輸入して、それがまた日本に入ってきてこれまた日本人もその更紗模様を真似て結局のところワケノワカラン植物や動物が描かれたエキゾチックな更紗模様が出来上がり、現代の私たちに受け継がれているのです。
人と人の交流が生まれると文化も交流して、柄も世界中を駆け巡ります。もし更紗模様着物や帯をお持ちでしたらお召しになる時に数百年前の大航海時代に思いを馳せるのも面白いかもしれませんね。
更紗模様とひとくくりに言いますが本当に色々な色柄が有りますのでご自分に合う物をよく見極めて着物や帯に取り入れ楽しんでください。


posted by kimono 1 at | きものを楽しむ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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